データ分析ツールキット
Emergo by ULのヒューマンファクタスペシャリストは、広範なユーザー行動分析を行っており、より安全、有効で使いやすい製品の設計だけでなく、製品設計開発におけるヒューマンファクタの適用に関する規制当局の要求事項の遵守にも貢献しています。当社のヒューマンファクタの解析ツールキットには、様々なタイプのユーザー分析が含まれています。
使用関連リスクの徹底的な理解につながる主なアクティビティ
- タスク分析
- URRA(使用に関するリスク分析)、Use-FMEA(使用故障モード影響解析)
- ハザード分析
- 既知の問題分析
- 有害事象分析
事業者のヒューマンファクタエンジニアリング(HFE)プロセスや市場の現状に特化したユーザー分析も実施します
- ギャップ分析
- しきい値分析、比較分析
- SOTA(最新技術水準)分析
- 市販後分析
タスク分析で潜在的な使用エラーの特定を開始
ユーザーインターフェースの分析は、製品の基本設計、改良、そして最終設計をもとに、簡単に始められます。まずは、製品仕様の詳細なウォークスルー(検証)を実施して使用の各ステップと順序を一覧にします。次に、各ステップについて個別にユーザーのPCA(知覚・認知・行動)分析を実施します。これにより、ユーザーインタラクションの効率を改善し、軽減または排除できる可能性のある使用エラーを可視化します。
使用に関するリスク分析(URRA)
Emergo by ULが率先して提供する分析で主なものが、包括的な使用に関するリスク分析です。あらゆる医療機器やコンビネーション機器の開発におけるHFEの適用計画の中心となる分析です。より安全かつ効果的に使用でき、米国FDAやその他の規制当局の要求事項を満たす機器を作るためにURRAは不可欠です。Emergo by ULは、技術的なアプローチでこの分析を行い、予測される使用シナリオに基づいたすべての潜在的な使用関連エラーを特定します。
URRA(使用に関するリスク分析)、Use-FMEA(使用故障モード影響解析)テーブル
通常、タスク分析から始め、各使用シナリオの各ステップを分析して潜在的な使用エラー、ハザード、危害、およびその重大性を特定します。最終的には、重大タスクを特定し、重要なリスク緩和に結びつけます。リスクは、潜在的危害の重大度、エラーの起きる可能性とその結果起こる可能性のある危害によって見積もりますが、使用に関するリスクの軽減を本質的に左右するのは、潜在的な危害の重大度です。これは、バリデーション(総括的)試験などを含むHFEアクティビティの範囲にも大きく関わってきます。人が製品を使用する際に発生し得るミスを、様々なPSF(行動形成因子)の存在を考慮して表形式で文書化します。環境的な特性、ユーザー関連の特性などがPSFに含まれます。URRA表の作成だけでなく、使用FMEAなどのより包括的なリスクマネジメント分析を実施することも可能です。
ハザード分析
Emergo by ULのハザード分析は、タスク分析と使用に関するリスク分析を補足するものです。タスクフローを見てどの使用エラーが害につながるかを検証するのではなく、ハザード分析では害を推定し、どのエラーがその原因になり得るかを考察します。例えば、やけど(熱傷、化学熱傷)、感電、生物学的汚染(感染)、放射線被ばく、その他さまざまなタイプの身体的、心的外傷といった害を想定することから分析を始めます。次に、どの使用エラーやその他の要因がそれぞれの害につながる可能性があるかを分析します。
既知の問題分析(KPA)
KPAでは、開発中の製品と類似の製品を使って、人がどのようにミスをしたり使いにくさを感じたりするのかを調査します。規制ガイダンスや認定規格では、製造業者に対し、「既知の使用関連問題を特定」することを求めています。過去から学ぶための構造的なこの取り組みは、開発中の製品のURRAへの重要なインプットとなります。
この分析のスコープでは、承認前例や市販済みの製品で類似したユーザーインターフェース、ユーザーインタラクション、使用方法のものに焦点を当てます。米国FDA医療機器有害事象データベース(MAUDE)にある報告書、顧客苦情システムのデータ、製品トレーナーやユーザーからのインサイトなどの情報をレビューし、分析します。
この分析の最終成果物は、既知の使用エラーに関する問題を明記した広範囲にわたる問題のリストとなります。各エラーについて、使用エラーを防ぐために導入されるリスク緩和策に言及しています。あるいは、今後の開発においてユーザーインターフェースの要求事項に変換できるリスク緩和策の導入の必要性を特定することもあります。
有害事象分析
この分析では、医療機器の使用で発生した有害事象を検証し、潜在的な根本原因となるユーザーインタラクションを突き止めます。製品のユーザーインターフェースにおけるヒューマンファクタの適切性の観点から事象をレビューし、行動特定因子を考察します。次に、設計上の欠陥がどのように有害事象を引き起こしたかの仮設を立てます。ユーザーインターフェースは原因に寄与していないと結論づける場合もあります。
Emergo by ULのヒューマンファクタスペシャリストが有害事象分析を行って最も可能性の高い根本原因を決定した例:
- 手術用吸引システムのユーザーインターフェースが原因となり、手術チームが受動的胸腔ドレナージに高い吸引圧を設定してしまい、致命的な肺損傷を引き起こしてしまったケース。
- 血液透析装置のユーザーインターフェースが原因で、装置が患者から体液を過剰に除去していることを看護師や医療技術者が見過ごしてしまい、致命、致傷的な血液量減少症を引き起こしてしまったケース。
- 自動体外除細動器のユーザーインターフェースが原因で、ユーザーがバッテリーテストをした際にうっかり、機器が放電している状態で放置してしまい、命に係わる不整脈を起こした人がこの機器を必要とした際に作動しなかったケース。
人体測定分析
Emergo by ULのスペシャリストは、古くから確立されている人体測定分析にも精通しています。サイズ、形、強さ、可動域、その他の人間の身体的な特徴に関する広範なデータベースをもとに、二次元、三次元で幾何学的な研究を行います。この分析により、製品が想定ユーザーの身体的特徴によく合致しているかどうかを確かめることができます。
人体測定分析の例:
- コンビネーション製品のユーザーに関する人体計測や人間工学のデータを集め、適切な設計を提案しました。
- 半自動の薬剤投与装置が正常に機能していない場合、緊急に装置を開けるためのレバーにかけられる力は5パーセンタイルの女性でどの程度かを分析しました。
- 手の大きさに関わらず、医師が持ちやすく使いやすい手術器具の適切なサイズを分析しました。
- 外科医がロボット支援手術で操作する座位・立位両用ワークスステーションの適切なサイズとコンポーネントの配置を分析しました。
HFEプロセスと市場分析
ギャップ分析
製造業者で実施しているHFEアクティビティと関連文書を定期的にレビューし、HFE要求事項(例:FDAガイダンス、IEC 62366)とのギャップを特定します。設計履歴やユーザビリティエンジニアリングファイルを完全なものにするために埋めるべきギャップです。Emergo by ULのスペシャリストがギャップを埋めるための取り組みを主導し、不足しているHFEアクティビティの実施および/または文書化、または製造業者がこれらのアクティビティを実施する際の支援を行います。
しきい値分析、比較分析
Emergo by ULは参照製品と提案された後発医療機器、または市販されている承認前例と開発中の新製品の相違点を体系的に調査します。こうした分析を実施することで、機器製造業者が規制当局の要求事項(例:提案する後発機器へのHFE適用に関するFDAのガイダンス)を満たしたり、既存製品のHFEデータを新製品開発に適用することの正当性を証明することにつながります。その結果、新製品開発において必要とされるHFEアクティビティのスコープを合理化できます。
SOTA(最新技術水準)分析
EU医療機器規則(MDR)の要求事項で、機器製造業者は医療機器を開発、製造するときに一般的に認識されている最新技術水準(SOTA)を考慮しなければならないとされています。SOTAは、テクノロジーや医療において現在一般的に良い手法だと認められているものの実践です。ISO 14971の第3版(ISO 14971:2019)でも、SOTA(最新の技術水準)を新たに定義しています。Emergo by ULは新製品の設計や開発の取り組みを、一般的に技術の先端だと認められている競合製品、標準、公開データなどと比較して、徹底したSOTA分析を行います。この分析により、新製品がどの程度、現在のSOTA機器に使用されている安全原則に準ずるべきか、また新製品のリスクはどの程度許容されるか、などを判断することができます。
市販後分析
規制当局は、機器製造業者が積極的に、HFE関連データなどの市販後情報を収集し、レビューすることを求めています。Emergo by ULは、機器事業者の定期的な市販後既知の問題分析の実施や文献レビューをサポートし、規制当局の市販後要求事項を満たすお手伝いをいたします。特に、追加で実施する市販後のHFEの取り組みをサポートすることができます。これには、アンケート調査の設計や実施、実際の使用におけるユーザビリティ試験、製造業者の苦情システムの改善による使用関連データの収集促進などが含まれます。
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